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13日本企業2006年度「企業論」川端望23-1日本的経営3システムとしての日本的経営雇用システム:終身雇用(長期雇用)・年功賃金・企業内組合(本章)企業間取引:系列関係(4章)金融取引:メインバンク関係(5章)コーポレートガバナンス:メインバンク・株式持ち合い関係と経営者企業(6章)4日本的経営「3種の神器」論終身雇用年功賃金企業内組合→雇用関係が日本の企業システム理解の鍵である雇用関係の多面性採用-昇進・異動・昇給-退職この講義では採用、退職は扱わない(が、大事でないという意味ではない)5年功賃金とは年功制の二つの意味DO元来の意味(氏原1966]):年齢・勤続を基礎とする経営管理の階層的組織と給与現在通用している意味:年齢・勤続とともに上昇する賃金では、生産性などの経済的要因と無関係に年齢や勤続が評価されているのか?知的熟練論はTCEの論理で経済的合理性ありとしたが、根拠がなかった。では、どう説明するか?6日本の賃金形態:何に支払っているのか日本の賃金は、何に支払っているのかあいまいで、一目では分からない場合が多い産業・企業規模合計賃金表がある計賃金表がない基本給のすべてに賃金表がある基本給の一部に賃金表がある調査産業計100.064.858.56.235.21,000人以上100.085.772.713.014.3100~999人100.077.769.18.622.3300~999人100.084.472.911.415.630~99人100.059.053.95.141.0平成13年度『就労条件総合調査』厚生労働省。7何に対して賃金を払うのか(賃金形態)DO遠藤[2005]による分類をベースに範式化=何に対して賃金を払うか→人と仕事の割り当て関係人の属性に対してか(賃金=人→仕事)or(賃金=人←仕事)年功給(その実質について後述)職能給職務に対してか(賃金=仕事←人)職務の価値に対してか時間単位給職務給職務の成果に対してか(賃金=仕事・その成果←人)個人歩合給・出来高給集団能率給8生活給規範説(1)会社は、コアとみなした従業員に生活給と退職金を支給するコアとみなす範囲は、戦前は男子ホワイト、戦後は正規雇用の男子ホワイト・ブルー女子には適用されない生活給は男子がはたらいて妻子を養うという前提で計算される退職金の起源は老後の生活への配慮であり、その分だけ若年時の賃金は安くされる昇進競争、人事査定は存在する9生活給規範説(2)賃金カーブと男子正社員の技能形成(野村[1994])技能が形成されるから、あるいはそれを促すから賃金が勤続とともに上がるのではない会社は、賃金を勤続とともに上げざるを得ないから、次第に難しい仕事に配置して技能形成を求める10確立過程:電産型賃金における生活給DO前提:戦後労働運動の成果ブルーカラー・ホワイトカラーの身分的差別撤廃電産(日本電機産業労働組合協議会)型賃金の特徴(大原社会問題研究所DB)権利としての賃金思想年齢・勤続等客観的な基準で各人の賃金を決定する労働時間と賃金の関係を明確化して基準労働賃金と基準外労働賃金を区分最低生活保障の原則を確立。物価水準とエンゲル係数という根拠を持って生活保障給を算出。11電産型賃金体系基準外労働賃金特殊勤務手当特殊労働賃金超過労働賃金居住地制限手当僻地勤務手当特別勤務手当作業手当特殊労働手当当直手当時間外手当基準労働賃金地域賃金基本賃金勤務給能力給生活保障給本人給家族給基本給12生活給規範のバイアス・変質・残存DO家族給は、夫が妻と子どもを養うという想定で計算されたいまから見れば、生活給思想にはジェンダー・バイアスがかかっていた会社は男子正社員のみを、右肩上がり賃金の対象とできた電産型賃金では、組合は査定を排除しなかった。査定に関する基準を持てなかった(遠藤[1999])能力給は許容して(基準賃金の20%程度)、会社の査定に委ねた性格評定も排除されなかった人事査定の本格化=査定つき生活給に労働組合は、日教組の勤務評定反対闘争(1957-59年)から批判的になる生計費の計算が曖昧になっても、査定がついても生活給規範は残った。今日もまったく否定されてはいない13職務給職務給の定義職務の価値に対して支払う賃金であり、より具体的には職務分析制度を持つ賃金職務分析:職務の構成要素を体系的に調査・分析原点はテイラーの時間・動作研究職務記述:職務の作業様式について記述職務分類:職務記述書を基礎に職務をグレードに格付け職務評価:各グレードに対応する賃金率の幅を決定14職務給の性格とバリエーション「職務給=賃金制度近代化の王道」説職務と対応しない年功賃金の克服作業の標準化、生産管理と結合した労働コストの体系的な管理客観性と公平性。同一価値労働同一賃金単一レートならば、賃金は、職務の価値によって決まり、誰が遂行するかは関係ないアメリカでは、組合が存在する企業のブルーカラーに多い範囲レート職務給ならば、同一職務の範囲内で、業績や年功によってある程度賃金が変動するアメリカでは、ホワイトカラーに多い15アメリカの単一レート職務給における査定排除ブルーカラー職場における単一レート職務給と先任権の結合=査定の排除組合企業における先任権の利用(1948-54年)(ジャコービィ[1985=1989]による)恣意的評価排除を求める労働組合の運動が背景に先任権を利用する先任権が決めるレイオフ99%73%再雇用81%昇進73%38%16アメリカの範囲レート職務給における査定DOホワイトカラー職場における範囲レート職務給は査定を伴う人事査定を実施する前提として、職務記述書が必要である(遠藤[1999])人事制度の差別性が裁判で争われる場合、職務分析がおこなわれていなければ会社が敗訴する「査定はしょせん主観」というのは不正確で、職務記述書という基準の有無によって相当程度左右される査定結果は通知され、通知した事実が文書で確認される(遠藤[1999])通知したことの本人確認サインがなければ、訴訟で会社が不利となる17日本における職務給導入の試みと挫折DO1950年代半ばから60年代前半にかけて導入を試みるもあまり定着せず日本における規範・慣行との矛盾職務の境界が明確でない上にしばしば変動する勤続に伴う昇給・昇進があるべきとする規範が職務給では否定される単一レート職務給では、職務が高い評価のものに上がらなければ昇給できない職務給は級別にポスト数(定員)が定まるので、上に空きがなければ昇進できない•例:国家公務員と旧国立大学仕事に人をつけるのか、人に仕事をつけるのか18職能給と能力主義管理1960年代後半以後、盛んに導入。しかし、いまでは「年功制だ」「成果主義にしなければ」と批判されている。なぜ?19職能資格制度による能力主義管理職務ではなく、職務遂行能力の相対価値を測定職務遂行能力の程度を職能資格の序列に表現し、社員ひとり一人を格付けする職能資格のランクは、職務横断的に決められる入社時のランク、平均的な到達ランクは、学歴や職種(ブルーとホワイト)によって異なる資格によって職能給を決定する資格と職位(役職)をリンクさせる図表3-1参照20職能資格制度における昇進・昇格(1)昇給・昇進頭打ち問題の「解決」一定の要件を満たせば昇格・昇給できる(図表3-2)資格定員はあることが望ましいとされたが、職務と1対1対応していないので柔軟に対処できる職能資格職位1級部長2級次長3級課長4級係長5級主任6級21職能資格制度における昇進・昇格(1)実際に就く仕事と能力がずれる可能性賃金=能力(を持つ人)→仕事Aクラス賃金=Aの能力(を持つ人)→仕事AAAクラス賃金=AAの能力(を持つ人)→仕事A昇格(それゆえに昇給)しても昇進(長への就任など)はないことも22職能資格制度の実際職務分析がなされていることが前提だが、実際にはなされないケースが多数賃金=仕事能力(を持つ人)→仕事のはずが賃金=仕事能力(を持つ人)・・・仕事に賃金=仕事能力(を持つ人)←…仕事に異なる職務に共通な能力の基準が曖昧に23能力主義管理が技能形成に有利とされた理由職能給自体には、配置転換を通した訓練を妨げる要素はない仕事と賃金が強く結びついていない労働法制と労使関係職務給と先任権システムでは、職務が細分化されると配置は硬直化する自分の職務以外の仕事はできない昇進の候補者は限られ、レイオフの順序は厳しくルール化されている職務給と先任権のシステム(アメリカのブルーカラーの人事管理)の硬直化ゆえに、日本の能力主義管理が相対的に高く評価された職務給改革の方向は、大区分化24ローテーションは経営管理の下にあるDO「職場」の範囲は?「慣行」は経営の必要性と対立しないもともと職務区分が曖昧であるから配置も曖昧であるが、あくまで経営管理の下にある人事異動による長期のローテーションは経営管理下にある(当たり前)職場の慣行が経営管理と矛盾するときに、労働側を代表する労働組合の交渉力は強くない25能力主義管理における査定の特徴(1)DO成績・能力・情意の三大要素成績・能力の査定:技能は仮に形成されてもあいまいにしか測定できない職務分析が不活発で、職務があいまい→職務遂行能力があいまい→査定基準が曖昧競争促進効果「何でも、どこまでも引き受けられる」「決められたこと以外のこともする」ことがとくに重視され、能力の証になる26能力主義管理における査定の特徴(2)DO情意考課性と信条による差別の誘発近年でも訴訟が起こっている公平な手続きの欠如結果の未通知が過半前任の上司の査定結果を後任者が参照。いったん低い評価になるとずるずる続く27能力評価の実質化の努力と挫折企業側による能力評価基準の確立の努力と困難職務調査の実施職種別職能基準の作成(図表3-3)職務のあいまいさの継続高度成長期:技術革新への適応→職務評価の困難石油危機以後:技術革新への適応プラス雇用調整あいまいな職務の方が柔軟な配置をしやすい明示的な年齢給・勤続給・基準不明の「基本給」などを持つ会社も残存28年功+能力評価によるホワイトカラーの昇進競争昇進の三層構造(今井・平田1995])学卒一括採用。採用年次別昇進管理競争相手は主として「同期」に限られる初期キャリア=一律年功型入社後数年間、昇進は一律処遇中期キャリア=昇進スピード競争型昇進の早い者と遅い者に分かれる後期キャリア=トーナメント競争型昇進しない者の出現。ランク差も大きくなる29職能資格制度の年功的運用(生活給規範の残存)昇格の年功的運用=「上ずり」現象(図表3-4)40歳程度まで、厳しく差をつけた選抜を控える傾向(おそい選抜)資格と役職の結合関係がルースに。資格定員解消の傾向。役職がないのに昇格(または部下なし管理職の増設)専門職制度の名目化何が受容され、何が受け入れられなかったか男子正社員は、「能力による競争」の理念は一般論として受容(競争拒否ではない)右肩上がり賃金カーブの変更は認められない。職能資格職位1級部長、部長待遇、部下なし部長など2級次長、次長待遇、部下なし次長、専門職など3級課長、調査役など専門職4級係長5級主任6級30「上ずり」現象の意味するもの能力(という名目での年功的評価)と職務が一致しない賃金=仕事能力(を持つ人)→仕事のはずが賃金=仕事能力(を持つ人)・・・仕事に人に仕事をあわせるように賃金=仕事能力(を持つ人)←…仕事に人件費の調整個々の労働者・仕事について、もとめられるパフォーマンスと対価は一致しない総人件費で調整31年功的運用になった職能資格制度は企業にとって合理的だったか男子正社員の処遇企業
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