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小規模市町村の連携による行政サービスの提供方策のあり方道州制時代の小規模自治体の行政サービス提供方策についての調査報告書平成22年3月財団法人九州地域産業活性化センターはじめに本報告書は、財団法人九州地域産業活性化センターが、平成21年度調査事業として実施し、道州制を見すえた小規模自治体の行政サービス提供方策についての成果を取りまとめたものである。同センターでは平成20年度に「九州における道州と基礎自治体の産業政策のあり方」において、道州制を見すえた市町村の産業政策のあり方を取りまとめたが、本報告書はそれに続き、住民生活に密着した「暮らし」分野の政策のあり方に焦点をあてるものである。道州制の導入を見すえたときの前提条件として、地域住民に身近な基礎自治体が、ニーズにきめ細やかに対応し、満足度の高いサービスを提供できるようになることが、とりわけ重要になる。平成21年8月の政権交代後も地域主権改革を進めるうえで、基礎自治体の役割を重視しており、その機能を強化する方針にある。ただ、基礎自治体といってもその置かれる状況は様々である。とりわけ九州では、山間・離島・半島地域といった条件不利地に位置する小規模市町村も一定数存在する。人口規模が小さく財政基盤が弱いことに加え、地理的な理由などによって合併が困難なケースも存在する。また、県境地域は、各県の端に位置することから、施設整備等が十分に行き届かず格差が生じるという議論もある。新・合併特例法が平成22年3月末に失効することで平成の大合併が一段落するが、今後は、市町村のアイデンティティを保ちながら行財政基盤を強化できるような、市町村合併以外の方法を模索していく必要がある。そのため、小規模市町村の特性に合わせた多様な選択肢のあり方について、実務に即した議論を深め、着実に実行できるような知見・方法論が必要とされている。本調査では、住民生活に密着した「暮らし」の中でも、医療・福祉等の分野を対象とした。小規模市町村が質の高いサービスを低コストで提供し、住民満足度を高めるためには、道州制移行前から、どのような行政サービス提供の仕組みや行財政基盤の充実を図るべきか研究することを目的として実施している。広く市町村の皆様にとって、地域活性化のための一助となることを期待している。なお、本調査研究の実施にあたっては、北九州市立大学南博准教授を委員長とする「道州制時代の小規模自治体の行政サービス提供方策についての調査委員会」を設置してご検討を賜った。また、調査に関しては小規模市町村の実情を把握するため、各地域でのフィールドワークを実施し、専門的な立場から財団法人九州経済調査協会にもご協力頂いた。ここに関係各位のご尽力に対し、深く感謝するものである。平成22年3月財団法人九州地域産業活性化センター会長鎌田迪貞目次序章調査研究の目的......................................................................................1第1章九州の小規模市町村における行政サービス提供の現状と課題(概要)2第2章小規模市町村の連携による行政サービスの提供方策(提言)...........6第3章今後の検討課題.................................................................................17<参考資料>1.基礎自治体のおかれている現状...................................................21(1)近年の小規模市町村に関する議論...............................................21(2)九州の小規模市町村の置かれる状況.............................................282.小規模自治体等によるサービス提供の実態.........................................43(1)ケーススタディの手法.........................................................43(2)宮崎県東臼杵郡エリア.........................................................44(3)長崎県五島列島エリア.........................................................67(4)大隅定住自立圏(鹿屋市).....................................................93(5)中津市定住自立圏.............................................................97(6)行政サービス提供などに関する課題............................................1023.小規模市町村の行政サービス提供の仕組みの検討..................................105(1)市町村の広域的な連携に関する視点............................................105(2)市町村の行財政基盤に関する視点..............................................1214.委員会開催概要................................................................1251序章調査研究の目的(1)調査研究の背景・目的地方分権、地域主権の目指すべき将来像のひとつとして道州制がある。道州制については、政府、各ブロックで論議がなされてきており、その中でも九州は、経済界や県を中心に構成される九州地域戦略会議のもとに道州制検討委員会を2次にわたって設置し、道州制の九州モデルが提言されている等、全国的にも議論の活発な地域であるといえる。道州制議論に共通している考え方として、基礎自治体が行政サービス提供の基盤を担うという考え方がある。道州制の導入を見すえたときに、基礎自治体が一定水準以上の行財政基盤を備え、住民に身近な行政サービスを自己責任・自己決定によって総合的に提供することで、地域の実情に応じた満足度の高いサービスを提供できることが前提となる。一方で、基礎自治体の状況は画一的ではない。山間・離島・半島地域等における小規模な基礎自治体では、人口規模が小さく財政基盤が弱いことに加え、地理的な理由などによって合併が困難なケースが存在する。また県境地域は、行政サービスが相対的に手薄となりやすく、格差が生じているという議論もある。そのため、小規模市町村の特性や提供する行政サービスの内容に応じて、多様な選択肢を研究し、関係団体に提言して実務に即した議論を深め、実行に移していく必要がある。また市町村の役割は、道州制導入のいかんを問わず、さらに重要になってくるものと考えられることから、その点からも市町村の行財政基盤を強化することは喫緊の課題である。本調査では住民生活に密着した「暮らし」の中でも、医療・福祉等の分野を対象として、小規模市町村が質の高いサービスを低コストで提供し、住民満足度を高めるためには、道州制移行前よりどのような行政サービス提供の仕組みや行財政基盤の充実を図るべきか研究することを目的とする。なお、小規模市町村の行政サービス提供の仕組みや行財政基盤の充実方策を検討する上で、適切であると考えられる分野として「医療・福祉分野」を対象とした理由は、以下の通りである。①人口減少社会、少子高齢化社会の本格的な到来をひかえ、市民生活を支える基礎的なサービスとして住民のニーズが一層高まってくると考えられるため。②今後、財政的負担が大きくなると考えられ、小規模市町村の運営においてサービス提供の費用効率を向上させる必要性が出てくると考えられるため。③国・県の関与の大きい分野であることから、地域の状況に応じた市町村の主体的な政策展開が難しくなっているのではないかと考えられるため。④一部の小規模市町村では、先進的な対応策が取り組まれており、サービス提供の仕組みを考えていく上で参考となるケーススタディを行いやすいと考えられるため。21万人未満59市町村、23.9%1万人~3万人未満83市町村、33.6%3万人~30万人未満97市町村、39.3%30万人以上8市町村、3.2%第1章九州の小規模市町村における行政サービス提供の現状と課題(概要)■本調査における小規模市町村の定義「小規模市町村」について明確な定義はないが、本調査では概ね人口1万人未満の自治体を指すこととする。なお、調査対象としては、小規模市町村に関連性の深い山間地地域や半島・離島、県境等の条件不利地を中心に取り扱うこととする。■近年の基礎自治体に関する議論第27次地方制度調査会答申では、基礎自治体について「住民に昀も身近な総合的な行政主体として、これまで以上に自立性の高い行政主体となることが必要」であるとしており、基礎自治体の権限や行財政基盤を強化していく必要があるとの方向性が示されている。近年の議論や提言などをまとめると、地方分権によって小規模市町村の行財政基盤を強化することで、基礎自治体が主体となる地域づくりを推進していくべきとする方向性がみられる。同時に、単独では事務の執行が難しい小規模市町村については、周辺市町村との連携等の方策を活用する方向性が示されている。一方、事務執行が困難な基礎自治体に対して広域自治体が対応することについては、広域自治体の関与増大につながるのではないかとする懸念もある。■九州の基礎自治体の置かれる状況九州の市町村のうち、人口1万人未満の小規模市町村は約1/4を占めており、決して少数ではない。また、山間地域や離島等の条件不利地に多く位置していることや、財政効率性の低さなど、行政サービスを提供する環境が厳しい状況にあることがうかがえる。なおかつ、医療・福祉分野については、それらサービスを必要とする高齢者の割合が高いことや、逆にサービスを提供する施設・機関が少ないことなど、厳しい環境に置かれていることがデータからも裏付けられる。■小規模市町村によるサービス提供の実態本調査では、九州において小規模市町村の多い地域と考えられる①九州山地周辺、②離島地域、③半島地域、④県境地域に対して、一部は定住自立圏を含めてケーススタディ(ヒアリング調査)を実施することで、行政サービス提供の実態を把握した。山間地域、離島地域では、医療・福祉のサービス提供において公共部門の果たす役割が大きい。一方で、地理的条件による制約が極めて大きく、サービス提供の効率化や広域連携が容易ではない。条件不利地や小規模市町村の状況に対応した連携のあり方を模索する必要がある。九州の市町村の人口規模ケーススタディ対象地域3また厳しい財政状況が続く中で、いずれの自治体も自助努力によって財政抑制や定員管理を続けてきている。そのため、さらなる権限移譲に関しては消極的な意見が多いことから、自立的な行政運営の実現に向けては、人的労力や専門性を補う方策を検討する必要がある。定住自立圏構想に関しては、自治の確保や制度の柔軟性の面で一定の評価がなされている。一方で、周辺市町村との意識の共有や取り組みに時間がかかること等が課題として聞かれた。山間地域における行政サービス提供に関する現状と課題(宮崎県美郷町、諸塚村、椎葉村)①市民生活に関する主要課題a)地域交通の確保●幹線・支線の地域交通の確保●独自運行による財政負担b)小集落の自治機能の維持●歴史的に培われた小さい集落単位での自治体制●機能集約が困難な行政サービスの補完に自治組織との連動が重要に●高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